呻り田

去年の夏に学生時代の同期たちで作った同人誌に寄稿した小説です。 時代は昭和中期モータリゼーションがまだ進んでいない田舎が舞台のお話です。 見渡す田園地帯は、刈り取られた稲わらを干す稲木で溢れていた。 縁側に腰かけて見渡すと、遠く山のふもとの集…

心の中のメスシリンダー  鼠穴と赤ずきん

よく幸せの総量、涙の総量なんて言葉を聞く。 なんでも聞くところによると、この世界の幸せの総量は決まっていて、ぼくたちはそれを分け合うゼロサムゲームをしているらしい。 それは大変だ。それなら僕の幸せをみんなに分けてあげなくちゃ。けれども分配で…

『ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992-1995』を読んで

先週から今週にかけて、図書館で借りた『ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992-1995』という本を読んでいた。そこに綴られている、戦争中の子供時代を回想する短い文章のひとつひとつが悲しく、皮肉で、そして何より美しい。

雪の日

車の外では雪がちらつき始めている。朝のニュースの天気予報では夕方から降雪と言っていたがこんな時に予報が当たらなくてもいいではないかと思う。 わたしは今高速道路出口脇の待機スペースに車を停めて電話を待っている。ドアのすぐわきにはネクスコの職員…

2人の遊戯

鍋の中で油がぱちぱち跳ねる音がしている。油の温度を確認するためにたらした小麦粉が音を立てて浮かんできた。温度はこんなものだろう。 醤油と酒とショウガで下味をつけた鶏肉は既に白い小麦粉にまみれている。それをひとつずつ適温になった油の中に入れて…

今回は小説ではありません。この一週間で感じたこととか思ったことをつらつらと書いていくだけにします。いうなれば日記みたいなもの? 報道に感情は不要? ついこの間ニュースとか報道について感情を排してAIとかに任せていればいいという意見を聞いた。そ…

本と涙

昼休みの職場近くの喫茶店。本を読みながら注文したクラブハウスサンドが来るのを待っている。 いつもなら同僚とお弁当を囲んでいるところだけれど今日はその同僚が休み。そして今朝はお弁当を作れなかった。目を覚まして時計を見たらいつもより一時間近く針…

私小説のようなもの

「おはようございます。6時になりました。11月8日木曜日のNHKニュースおはようにっぽんです。」 オンタイマーをセットしてあるテレビからアナウンサーの声が聞こえてくる。 しまったと思いながらシャワーを浴びるために浴室へ向かう。 昨夜はライティングス…